【 日立造船 】
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(理事長:山川 宏 以下、JAXA)と日立造船株式会社(取締役社長兼 CEO:三野 禎男 以下、日立造船)は、国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟に設置した全固体リチウムイオン電池の実証実験を実施し、世界で初めて宇宙で充放電できたことを確認したと発表しました。
JAXA と日立造船は、宇宙探査イノベーションハブの研究提案公募の枠組みの下、2016 年から全固体リチウムイオン電池の共同開発を行ってきました※1。この全固体リチウムイオン電池は-40℃~120℃という広い温度範囲で使用可能であり、かつ、安全性が高く破裂発火のリスクが極めて小さいため、温度差の激しい、真空で放射線に晒される宇宙環境で利用する設備の小型・軽量化や低消費電力化に寄与することが可能です。そのため、従来宇宙で使用している有機電解液のリチウムイオン電池では難しかった省スペース化が求められる小型機器への適用や船外実験装置などでの使用が可能になります。
今回の実験は、本年 2 月 20 日(日本時間)に ISS に向けて打ち上げた全固体リチウムイオン電池軌道上実証装置(Space As-Lib)を、「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームに設置された「船外小型ペイロード支援装置(SPySE)」※2 に取り付け、宇宙環境で全固体リチウムイオン電池の充放電の実証を行うものであり、3 月 5 日に世界で初めて充放電が可能であることを確認しました。タイトルの写真はその際に得た電力で Space As-Lib に搭載したモニタカメラが撮影したものです。
今後の実証実験では、宇宙環境下における同電池の特性などを評価する次のステップとして、基本的充放電特性データと宇宙環境曝露部特有の条件(真空、放射線、微小重力等)による容量劣化推移の評価に必要なデータを取得する予定です。
将来的な全固体リチウムイオン電池の用途としては、月面に設置する観測機器や、小型のローバ、更に大容量化を実現した後には、本格的な大型のローバなどの宇宙機での使用が期待されます。地上での用途では、従来の電池では適用が難しかった高温、低温や真空環境下にある産業装置、高温滅菌を要する医療機器やその他各種機器への展開を検討しています。
※1 | JAXA が国立研究開発法人科学技術振興機構から受託した「イノベーションハブ構築支援事業」(太陽系フロンティア開拓による人類の生存圏・活動領域拡大に向けたオープンイノベーションハブ)において、「全固体リチウムイオン二次電池の開発」を共同で行う契約締結し、2016 年から 2018 年まで実施。その後も継続して研究を続けており、2021 年 2 月に JAXA と日立造船の間で、全固体リチウムイオン電池の実用化に向けた宇宙での実証実験に関する共同研究契約を締結。2022 年 2 月には、全固体リチウムイオン電池軌道上実証装置(Space As-Lib)を ISS に打上げ、「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームに設置した。現在も軌道上実証実験を継続して実施中。 |
※2 | ISS の「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームに設置されている中型曝露実験アダプタ(i-SEEP)の利用の多様化・拡大を目指し、JAXA が開発を進めてきた実験インフラ。i-SEEP の装置搭載エリアの片方に取り付けて、最大 8 個の小型装置 (面積 10cm 四方、高さ最大 30cm)を相乗り可能とするインターフェースを提供する。JAXA は、全固体リチウムイオン電池の搭載を通じて SPySE の機能検証も行う。 |
全固体リチウムイオン電池軌道上実証装置
(Space AS-LiB)
Space AS-LiB 構成(左)と AS-LiB®140mAh セル(右)
i-SEEP/SPySE 外観図と全固体リチウムイオン電池設置場所
【本実証実験で使用する全固体リチウムイオン電池の概要】
日立造船が 2016 年に開発したものを元に、JAXA および日立造船が共同開発した全固体リチウムイオン電池。
サイズ : 65 ㎜ × 52 ㎜ × 2.7 ㎜
質 量 : 25g
容 量 : 140mAh(15 セル並列接続により約 2.1Ah の電源として使用)
特 長 :
① 固体電解質を用いるため、低温で物質の状態変化がなく、また高温でも固体電解質が分解しないため、-40℃~120℃という環境下でも安定動作が可能
② 液体材料を使用していないため、液漏れがなく、固体電解質が難燃性のため、発火、発煙、破裂等の危険性が極めて低い
③ 揮発成分を極小化した電池構成を実現し、真空下でも大きく膨張することがない

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