2030年度のグリーン電力市場は 2020年度見込比 14.0倍

富士経済

―2030年度の市場予測―
■グリーン電力市場
販売量は電力小売市場全体の4.7%、市場規模は2020年度見込比14.0倍の6,217億円へ
~RE100対応を想定する法人施設向けを中心に拡大~

■電力小売市場
・平均電力単価 19.6円/kWh
 ~容量市場や再エネ賦課金などコスト増により2020年度見込比18.8%増~
・販売額 15兆6,560億円 うち新電力は4兆6,640億円
 ~新電力は家庭向けを中心に顧客獲得、シェア30%まで拡大~

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 清口 正夫 03-3664-5811)は、一連の電力システム改革の最後の節目である発送電分離が実施され、競争のさらなる活発化が期待される国内の電力小売市場を調査した。その結果を「電力・ガス・エネルギーサービス市場戦略総調査 2021 総括編」にまとめた。

この調査では、旧一般電気事業者や旧一般ガス事業者、新電力事業者、大手発電事業者などの主要各社の電力・ガス小売事業や発電・LNG調達事業の実績の集計・分析に加え、エネルギーサービスプロバイダを軸とした主要なエネルギーサービス事業者の事業状況や販売代理店の電気・ガス販売状況を調査し、エネルギー市場の全体像と将来動向を予想した。

なお、旧一般電気事業者および大手都市ガス事業者や発電・LNG調達事業の事業実績や事業戦略は「同 旧一般電気・ガス事業者編」、新電力事業者の事業戦略は「同 新電力編」でより詳細にまとめた。

<調査結果の概要>


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グリーン電力市場

水力、太陽光、風力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギーにより発電され、小売電気事業者によって需要家へ供給される電力を対象とする。

2017年に東京電力エナジーパートナーが一般水力発電所を電源とした「アクアプレミアム」の提供を開始し、それ以降グリーン電力の直接供給型として参入が広がりつつある。新電力ではCO2排出量を低減させたプランを特徴とした出光グリーンパワーなどの事業者が法人向けに提案を行っていた。

2018年度以降はRE100をはじめとする需要家の環境意識の高まりや、競合他社との差別化などを背景にグリーン電力プランの提供が拡大している。グリーン電力の供給先は、製造業や小売・流通などのグローバル企業を含む大企業、自治体や官公庁などの公共施設が多く、旧一般電気事業者は大規模需要家に、新電力は比較的小規模需要家に対してグリーン電力を供給している。

今後もRE100の報告書への活用などを想定した法人施設向けを中心に市場は拡大していくと予想される。家庭向け料金プランも拡充されているが、供給実績は一部にとどまる。

■電力小売市場

1)平均電力単価


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価格競争が進んでおり、2020年度の平均電力単価は16.5円/kWhになると見込まれる。中長期的にはLNG・原粗油・石炭の燃料輸入価格の上昇、容量市場開始に伴う容量拠出金の費用負担、再エネ賦課金の増加、電力系統の増強に伴う託送料金単価の値上げなどを背景として、2030年度の平均電力単価は2020年度時点から3.1円/kWh上昇し19.6円/kWhになると予測される。

2)販売額

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2020年度は電力販売量の減少から市場は13.1兆円へ縮小する見込みであるが、中長期的には微増傾向が続き、2030年度には15.7兆円と拡大するとみられる。

低圧電灯・低圧電力が全体の約5割を占める構造となる。低圧電灯・低圧電力は電力販売量の減少を電力単価の上昇が補う形で、2020年度以降も市場は堅調に拡大するとみられる。一方で、業務・産業施設向けの特別高圧・高圧は微増が続くと予測される。

【特別高圧・高圧】
2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響により、産業・商業施設などの需要が減少し、市場は前年度から縮小するとみられる。

長期的には、人口減少による需要減や産業・業務施設に省エネサービスや高効率機器の導入がさらに進むことで、販売量は減少すると予想される。また、新電力による大規模需要家の獲得件数は増加するが、価格競争が激しくなるため、シェアの拡大は限定的とみられる。

しかし、旧一般電気事業者および旧一般ガス事業者系新電力は域外での電力販売にも注力していることや、大手新電力では価格競争以外の差別化策の一環としてグリーン電力の販売に注力していることは新電力拡大の要因になるとみられる。

【低圧】
2020年度は新型コロナの影響でテレワークの普及などにより、在宅時間が増加したことから巣ごもりによる一時的な電力需要が発生したものの、前年度比マイナスになると予想される。

長期的には、低圧の大半を占める住宅向けが人口および世帯数の減少や、新築戸建住宅を中心としたZEHなどの省エネ・高断熱住宅の増加、太陽光発電の普及と発電電力の自家消費の増加によって電力系統からの購入量が減ることから、販売電力量は減少が続くが電力単価上昇により販売額は増加するとみられる。

また、電力およびガスの小売全面自由化以降、各事業者による家庭向けの顧客獲得競争が続いており、今後は新電力によるシェアが拡大すると予想される。


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