ENEOS・千代田化工など、豪州産CO2フリー水素サプライチェーンの規模を拡大

ENEOS、千代田化工など、豪州産CO2フリー水素サプライチェーンの規模を拡大"

ENEOS株式会社(社長:大田 勝幸)と千代田化工建設株式会社(社長:山東 理二)、クイーンズランド工科大学(学長:Margaret Sheil、「QUT」)は、2018年から進めているCO2フリー水素の製造、輸送、脱水素に関する技術検証において、世界で初めて実際に使用できるレベルまで規模を拡大し、燃料電池自動車(FCV)へ充填することに成功したと発表しました。

水素を貯蔵・運搬する際には、水電解によって生成した水素をタンクに一度貯蔵し、その次に有機ハイドライドの一種であるメチルシクロヘキサン(MCH)※1 に変換する必要があります。本技術検証では、その工程を大幅に簡略化し、水とトルエンから一段階の反応でMCHを製造する、ENEOSが開発した「有機ハイドライド電解合成法※2 (Direct MCH®※3)」を採用しています。

2019年3月に、本手法により豪州の再生可能エネルギー由来のMCHを製造し、日本で水素を取り出す世界初の技術検証を実験室レベル(約0.2kg)で成功しておりましたが、今回、実際に使用できるレベル(約6kg)にまで規模を拡大し、日本においてMCHから水素を取り出し、実際に燃料電池車に充填、走行させることに成功しました。

水素の大量消費社会の実現に向けて、ENEOSはMCH製造量を更に増加させるために、Direct MCH®技術を活用する電解槽の大型化に取り組んでおり、本検証はその一環です。2022年度には大型電解槽のベースとなる150kW(電極面積3m2)級の中型電解槽を完成させ、2025年度をめどに5MW級の大型電解槽の開発を目指しています。将来的には2030年度をめどに、CO2フリー水素サプライチェーンの構築に向け、技術開発を進めます。

今後も3者は、日本の2050年までのカーボンニュートラル実現への貢献に向けて、産学連携でCO2フリー水素製造技術の社会実装に向けた商用規模での技術開発を早期に実現することを目指します。


※1 水素ガスの500分の1の容積で常温常圧の液体。貯蔵や輸送等、取り扱いが容易なことが特徴。
※2 有機ハイドライド電解合成法は、再生可能エネルギー等の電気から水とトルエンを用いてMCHを直接製造する製法。
※3 Direct MCH®は、ENEOS株式会社の登録商標。
本技術開発の一部は国立大学法人横浜国立大学・光島重徳教授、デノラ・ペルメレック株式会社の共同開発で実施。


Direct MCH®の今後の技術開発ロードマップ

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有機ハイドライド電解合成法(Direct MCH®)によるプロセス簡素化のイメージ

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有機ハイドライド電解合成法 (Direct MCH®)の概念図

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水素ガスはエネルギー密度に対して体積が大きく、液化するためには極低温(-253℃)が必要なため、輸送方法の技術開発が課題となっています。

Direct MCH®技術では有機物であるトルエンに水素を電気化学反応により付加させることで常温において液体のMCHに変換し、従来の石油のように輸送することが可能になります。水の電気分解を行うのと類似の機構により、水素ガスを介さずに直接MCHを製造する独自技術の実証をENEOSが行っています。本技術では、CO2フリー水素のコストを大幅に低減することが可能です。

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