東京電力パワーグリッド、再生可能エネルギー導入促進「アジャイルエナジーX」を設立

東京電力パワーグリッド、再生可能エネルギー導入促進「株式会社アジャイルエナジーX」を設立

東京電力パワーグリッド株式会社は、株式会社アジャイルエナジーX(エックス)を設立し、10月1日より営業を開始すると発表しました。アジャイルエナジーXは、再生可能エネルギー(以下、「再エネ」)で発電された電力で先端技術「分散コンピューティング」システムを稼働させ、デジタル価値や環境価値を生成・提供することなどで、再エネのさらなる導入を促進していきます。

天候で発電量が変動する太陽光などの再エネ(変動性再エネ)は、電力需給バランスの維持のために出力制御や系統制約を受けやすい傾向があり、有効活用できない余剰電力が生じています。近年、このような再エネの出力制御量が全国的に増大傾向にあるほか、系統混雑が原因で再エネ連系が困難な状況でもあります。このため、国内には現在の発電電力量の最大2倍のポテンシャルが存在するとの試算※1 もある中で、現状は、このエネルギー資源を十分に活用しきれていません。

アジャイルエナジーXでは、この状況を打開し再エネ導入量を拡大させるために、電力需給の変化に呼応し電力需要を柔軟に創出することで、再エネの出力制御や系統制約を緩和するソリューションを全国に提供します。

電力需要創出の具体的方法は、AI/機械学習やゲノム解析、CGレンダリング、仮想通貨マイニング※2 などに用いられている多数のコンピューターを、ネットワークを介して繋ぎ膨大な演算を同時並行的に実行可能とする「分散コンピューティング」です。再エネを利用した分散コンピューティングにより、デジタル価値のほかグリーン電力証書などの環境価値も創出できるため、自治体の脱炭素促進や再エネ事業者の収益増大、エネルギー地産地消促進や地域経済活性化に繋がると考えています。

また将来的にアジャイルエナジーXは、一般送配電事業者などに対し、分散コンピューティングを利用した系統混雑緩和に資するソリューション提供も目指します。

東京電力パワーグリッドとアジャイルエナジーXは、同ソリューションを通じて、カーボンニュートラル実現を強力に推進します。

※1 環境省「我が国の再生可能エネルギー導入ポテンシャル 概要資料導入編」
https://www.renewable-energy-potential.env.go.jp/RenewableEnergy/doc/gaiyou3.pdf
※2 ビットコイン等の仮想通貨の取引データを検証し、ブロックチェーン上に追記するための暗号計算を行う作業のこと。追記に成功した作業者には、報酬として仮想通貨が新規発行される。

1.アジャイルエナジーX 事業概要

変動性の再生可能エネルギー(以下、「再エネ」)などを分散コンピューティングシステムを含む可搬型の分散エネルギーリソース設備※1 に利用するというスキームを構築し、再エネ発電量に呼応すべく電力需要を柔軟に創出する。これにより、これまで余剰として発電抑制されていた電力の有効活用を実現する。また、事業採算性の問題で未利用となっている地域の再エネを含むクリーンエネルギー資源を追加的に掘り起こし、電力の地産地消を促進することも目指す。

分散コンピューティングは、離れた地点に分散設置された複数のコンピューターをネットワークでつなぎ、複雑な計算タスクを細切れに実行可能なことから、余剰電力が発生する時間および空間に合わせてコンピューターを稼働させることで、需要を柔軟に創出・抑制可能である。

分散コンピューティングの中でも特に仮想通貨マイニングは、直接の顧客がいないという特異な事業形態であるために、計算の開始・停止を自由に制御可能であることから、需要創出の柔軟性が極めて高い。さらに、大容量の通信回線が不要であることや、空調設備等の付帯設備は簡素なものしか必要としないなど、設置の柔軟性も高い。

一方、世界規模での仮想通貨マイニングの拡大による電力消費と環境負荷の増大を指摘する声もある※2。本スキームは、電力を大量に消費するコンピューターの特性を逆手に取り、再エネ導入の拡大を妨げている課題の解決に利用することで、カーボンニュートラル促進につなげるという、逆転の発想に基づくものである。

具体的なステークホルダー向けソリューション提供イメ―ジは以下のとおり。

【自治体】

脱炭素を推進する自治体が導入する再エネの余剰電力を買い取り、分散コンピューティングに利用。生じたデジタル価値や環境価値などによる利益の一部を自治体に還元。脱炭素のまちづくりや、エネルギー地産地消、地域経済活性化の促進に貢献。

【再エネ事業者】

再エネ事業者から余剰電力を買い取り、分散コンピューティングに利用。再エネ事業者は、余剰電力の買取り先が確保できることで事業採算性が向上し、追加的な再エネ導入も促進される。

【一般送配電事業者/配電事業者】

系統混雑エリアで分散コンピューティングによる需要を創出し、将来の設立について国で現在議論されている混雑緩和のための市場メカニズムを介して、一般送配電事業者や配電事業者に対し調整力を提供。エネルギー地産地消の促進によるレジリエンス向上にも貢献。

※1 分散エネルギーリソース(Distributed Energy Resource、DER)とは、分散して設置さ れているエネルギー設備のことで、発電設備、蓄電設備、需要設備の 3 種類がある。
※2 仮想通貨の一種ビットコインのマイニングによる電力消費量を推定している英国ケンブ リッジ大学オルタナティブ・ファイナンス・センター(CCAF)によれば、ビットコイン マイニングによる電力消費量は年々増加している(https://ccaf.io/cbeci/index)。

2.会社の概要

社名 株式会社アジャイルエナジーX(エックス)
所在地 東京都港区港南二丁目 16 番 5 号
資本金 3 億 5,000 万円(資本準備金含む)
出資比率 東京電力パワーグリッド株式会社:100%
代表者 代表取締役社長 立岩 健二
設立日 2022 年 8 月 26 日
営業開始日 2022 年 10 月 1 日
事業内容 未利用再生可能エネルギーを含むクリーンエネルギー資源の有効活用 および電力系統の最適化に資する、電力需給・系統混雑状況に応じて 機敏かつ柔軟に設置・運用可能な分散エネルギーリソース設備(コンテ ナ型分散コンピューティング装置およびブロックチェーン技術に立脚 した仮想通貨マイニング装置など)を用いた、電力のデジタル価値への 転換、ならびに関連する先進的なソリューションの企画、調査、研究、 開発、制作、運用、保守、販売、コンサルティングなど

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